国家知識産権局局長の申長雨は、次のように紹介した。
わが国にて専利法を施行して以来、すでに3回の改正が行われている。現在は第4回の改正を行おうとしており、その改正作業全体は順調に進んでいる。
昨年の12月に、国務院常務委員会の審議を専利法改正草案が通過し、現在、全国人民代表大会にて第1回審議が行われたところであり、専利法の改正は、年内に完了する見込みである。
(情報の出所:中国ネット)
国家知識産権局局長 申長雨 : 「知財の審査の品質と効率を高めることについて」
3月11日、第13回全国人民代表大会代2回会議のメディアセンタにおいて記者会見が行われた。
国家知識産権局局長の申長雨は、次のようにメディアとやりとりした。
記者:昨年上海で開催された第1回輸入博覧会において、習近平総書記が知的財産権の審査の品質と効率を上場させる必要があり、国務院の関連部門もその件について専門部署が業務を進めていると特に強調されました。
ここで質問なのですが、現在、その業務の進展状況はいかがですか?現在、どのような効果がありますか?
局長:その点についてご質問いただき、ありがとうございます。
知的財産権の審査の質と効率を高めることについて、今ご指摘いただいたように、昨年の第1回輸入博覧会において、習近平総書記が重要な指示を出され、国務院も相応の手配を行いました。
市場監督管理総局および知識産権局は、習近平総書記の重要な指導精神、および党中央、国務院の政策手配を確実に実行するべく、明確な業務計画を制定しました。
例えば、昨年から、5年以内に商標審査周期を8ヶ月から4ヶ月以内に短縮し、OECDの中で最も速いレベルに到達しようとしています。また、発明の審査周期を1/3短くし、高価値の発明の審査周期を半分未満にし、国際的に最も速いレベルに到達しようとしています。
そのような目標を実現するために、国家知識産権局は一連の措置をとっています。
第1に、審査官のチームの構築を強化し、審査の力を強化することを通じて審査の能力とレベルを高めます。
第2に、審査業務の情報化レベルを全面的に向上させ、スマート審査システムの構築を加速させ、情報技術により質と効率を向上させます。
第3に、審査業務管理プロセスをさらに最適化し、きめこまかな管理を採用し、質と効率を高めます。
第4に、審査業務の方針とモデルを生み出します。例えば、集中審査、加速審査を導入し、質と効率を高めることです。
これらの一連の措置をとることで、明らかな効果を得ます。昨年末、商標審査周期はすでに8ヶ月から6ヶ月以内に短縮され、高価値の専利の審査周期は10%短くなるとともに、審査の品質も徐々に向上し、審査に対する社会の満足度も向上しています。
(情報の出所:中国ネット)
2018年、検察機関は、知的財産権を侵害した5,000人余りを逮捕
2019年1月22日、最高人民検察院第4検察庁庁長鄭新儉は、【New Times Four Procuratorials】のネットインタビューにおいて、2018年、全国検察機関が知的財産権を侵害した5000人余りを逮捕し、8000人余りを起訴したことを指摘した。
2018年、検察機関は重大で複雑な案件に対して監督力を強化し、10件の重大な商標権侵害案件を重点的に監督し、中央の関連部署と22件を共同で監督した。
300件余りの知的財産権を侵害する案件の司法への移送を監督し、公安機関による200件に近い知的財産権侵害する案件を監督して、起訴しないこと、移送しないこと、および罰金を刑罰の代わりにすることの問題を効果的に解決した。
2018年、全国検察機関は、偽の薬の製造、販売の罪で、安全基準を満たしていない食品の製造販売、有毒で有害な食品の製造販売に関する約3,000件について逮捕し、約12,000人を起訴した。
(情報の出所:中国知識産権局サイト)
《専利代理条例》が国務院の常務会議にて審議、2019年3月1日に実施
改正に係る《専利代理条例》を国務院の常務会議が審議し、2019年3月1日に実施される。現行の《専利代理条例》は1991年に実施されたものである。
2018年の10月末までに、42569人が弁理士の資格を取得している。執業証を有する弁理士は18468人であり、専利代理機構の数は2126に達している。
今回の改正では、「市場リソースに対する政府の直接管理を最小化し、市場活動への政府の直接の干渉を最小化し、そして微小対象を自由にする」という原則によって2つの行政認可を取り消し、2つの行政認可を最適化し、弁理士、専利代理機構になる条件を緩和させた。
(情報の出所:中国保護知識産権サイト)
国家知識産権局の組織改変
国家知識産権局の専利覆審委員会は、国家知識産権局専利局に組み込まれ、工商行政管理総局の商標局、商標評審委員会、商標審査協力センタは国家知識産権局商標局に統合され、組織改変後は、専利、商標の業務は国家知識産権局の名義で行われる。
(情報の出所:中国知識産権局サイト)
主席である郝慶芬が、2019年強国知識産権フォーラムのベストテン専利代理人に選出
2019年2月23日、北京大学博雅国際ホテルにおいて強国知識産権フォーラム組織委員会と北京強国知識産権研究院が主催の「趨勢を洞察、未来を照らす 2019強国知識産権フォーラム新春会サ-ビス産業授賞式」が開催されました。Dragon IPグループの主席である郝慶芬、300名の学者、企業のリーダ、104名の弁護士、機構代表が会議に出席しました。
授賞式では、「2019強国知識産権フォーラムサ-ビス産業ベストテン」が発表され、郝慶芬は知的産権分野での優れた貢献によりベストテン専利代理人に選出されました。
郝慶芬は中国知的財産権分野での有名な弁理士であり、中国専利法に精通し、特許出願、特許審査、特許無効化、特許訴訟などの面で豊富な経験を持っています。
(左から3人目が郝慶芬)
(左から2人目が郝慶芬)
銀龍コラム及び代理実務
禁反言原則の適用と専利権付与、確認手続における応対
禁反言とは、専利権付与又は無効手続において、専利出願人又は専利権者が請求項、明細書に対する限定的な補正又は意見陳述の方式を通じて放棄した保護範囲について、専利権侵害訴訟において均等侵害を構成するか否かを確定する際、権利者がすでに放棄した内容を専利権の保護範囲に再び含ませることを禁止することを指す〔1〕。禁反言原則の目的は専利権者による「両方で得する」ことを防止することである。
中国では、禁反言原則は、専利法第59条「発明又は実用新案専利権の保護範囲はその請求項の内容を基準とする」ものの一種の補足であり、この専利法の最も基本的な原則を超えることができない。文言侵害が成立する際、禁反言を考慮する必要はないが、文言侵害が成立せず、さらに均等侵害の成立か否かをさらに判断する必要がある際に、禁反言を考慮する必要がある。すなわち、禁反言は均等論に対する一種の制限に過ぎない〔2〕。
本文では、禁反言に関する理論詳細を検討せず、関連の司法解釈を基に、多くの案例から最高人民裁判所の4個の典型的な案例を選出し、当該4個の案例を通じて、権利侵害手続における禁反言の適用を説明し、授権、権利確認手続における応対を検討する。
一、法律根拠
《最高人民裁判所による専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈》(法釈〔2009〕21号)(以下「専利権侵害司法解釈一」という)の第6条では、初めて禁反言を中国専利制度に導入し、具体的には、「専利権の付与、若しくは無効宣告手続において、専利出願人や専利権者が請求項や明細書の修正、若しくは意見陳述を通して放棄した技術方案を、権利者が専利権侵害をめぐる紛争案件で改めて専利権の保護範囲に取り入れた場合には、人民法院はこれを支持しない」。
《最高人民裁判所による専利権侵害をめぐる紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈》(法釈〔2016〕1号)(以下「専利権侵害司法解釈二」という)の第13条では、禁反言を適用する際の制限条件をさらに規定規定し、具体的には、「専利出願人、専利権者が専利権付与・権利確認の手続きにおいて、特許請求の範囲、明細書及び図面の限定補正又は陳述が明らかに否定されたことを権利者が証明した場合、人民法院は、当該補正又は陳述が技術案の放棄を導いていないことを認定しなければならない」。
北京市高級人民裁判所による《専利権侵害判定指南(2017)》の第61~第64条では、禁反言の定義、適用範囲、適用条件、適用前提などに対してそれぞれに規定をしている。
また、最高人民裁判所は、《最高人民裁判所知識産権審判案例指導》(第1巻~第10巻)において、複数の禁反言に関する案例を選出し、裁判の基準を明確にする。
二、典型的な案例分析
1.案例1〔3〕
案件にかかわる専利の請求項1は車のパイルロックに関するものである。
本案件の争議点の一つは、裁判所が自発的に禁反言を適用できるか否かということである。
本案件において、専利権者が専利権付与審査手続、専利権無効宣告審査手続及びその後の司法審査手続中に行った関連技術的特徴に関する説明、及び専利復審委員会と相応の司法審査における裁判所の認定も請求項を解釈するための重要な依拠であり、裁判所が均等侵害を認定する際、職権によって、案件事実に基づいて禁反言を適用するか否かを審査し、均等侵害を適当な範囲内に限定しているべきであると、一審と二審裁判所は認定している。
被申請人(被疑侵害者)が禁反言を抗弁理由とするという主張を提出していないので、二審裁判所が自発的に禁反言を適用することは法律根拠に欠けている、と再審申請人(専利権者)は主張している。
禁反言は均等侵害の認定に対する制限であり、現行法律及び司法解釈は人民裁判所が自発的に均等論を適用できるか否かを規定していない。専利権者と被疑侵害者及び社会公衆の間の利益バランスを維持するため、人民裁判所が自発的に禁反言を適用することも制限をしない。よって、均等侵害の成立か否かを認定する際、被疑侵害者が禁反言の適用を主張していないとしても、人民裁判所はすでに明確にした事実に基づいて、禁反言を適用することを通じて均等範囲に必要な制限を与えることで、専利権の保護範囲を合理的に確定する。
また、当該案件の裁定結果からわかるように、意見陳述だけでも禁反言の適用に導く。これに対して、案例2〔3〕を参考してもいい。
2.案例3〔4〕
案件にかかわる専利の請求項1は薬物組合物に関するものである。
専利出願人は実質審査過程中に請求項が明細書からのサポートを得られないという不備を克服するために「可溶性カルシウム」を「活性カルシウム」に補正して登録になった。案件にかかわる専利公開書類の明細書に「可溶性カルシウムはグルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウムまたは活性カルシウムである」と明確に記載されている。
被疑侵害者が生産した製品にグルコン酸カルシウムが含まれ、専利権者は被疑侵害製品が案件にかかわる専利の技術方案と均等できると主張しているが、被疑侵害者は均等を構成しないと抗弁している。
専利授権機関にそれが出願した専利は新規性又は進歩性を有すると認めさせるために行った補正又は意見陳述だけ、禁反言の効果を生じることができ、専利出願過程中に請求項に関するすべての補正や意見陳述は禁反言の適用を導くわけではない、と一審と二審裁判所は認定している。よって、本案件における補正は禁反言の効果っを発生せず、被疑侵害製品が案件にかかわる専利の保護範囲に入ったと認定されている。
専利権者が専利授権手続中に行った補正は「グルコン酸カルシウム」という技術的特徴を含む技術方案を放棄したので、案件にかかわる専利権の保護範囲は「グルコン酸カルシウム」という技術的特徴を含む技術方案を含むべきではない、と最高人民裁判所は認定している。被疑侵害製品の相応の技術的特徴はグルコン酸カルシウムであり、専利権が専利授権手続中に放棄した技術方案であり、それが請求項1に記載されている「活性カルシウム」という技術的特徴と均等であると思われ、それを専利権の保護範囲に取り入れるべきではなく、原判決の禁反言に対する理解は間違って、二者を均等特徴と認定されることは適切ではない。
コメント:
北京市高級人民裁判所による《専利権侵害判定指南(2017)》第62条の規定と結合して、禁反言の適用範囲は、新規性又は進歩性を狙って行った補正や意見陳述に限らず、新規性や進歩性に欠けていること、必要な技術的特徴に欠けていること、請求項が明細書からのサポートを得られないこと及び明細書が十分に公開していないことなどのような授権を獲得できない実質的な不備を克服するため、保護範囲を制限又は部分的に放棄することも含む。簡単に言うと、新規性や進歩性以外のその他の専利授権条件を満足するために請求項を補正することも禁反言の適用を導く。
3.案例4〔5〕
案件にかかわる専利の請求項1~3はモデルステアリングギアに関するものである。
本案件の無効手続において、案件にかかわる専利の請求項1~2は無効宣告され、請求項3を基に、専利が有効であると維持している。
請求項3の付加技術的特徴は新たに追加された技術的特徴であり、そのうち、タイバーが「銀膜」であると限定されるが、被疑侵害製品は「金メッキ銅ストリップ」を採用してタイバーとする。本案件の争議点は、請求項1~2が無効になった事実は請求項3の付加技術的特徴が禁反言の制限を受けて被告の製品が均等侵害を構成しないことを招くか否か、という点にある。
従属請求項3が有効であると維持されている原因は請求項1に従属請求項2及び従属請求項3の付加技術的得量を追加したことにあり、これは実際に請求項1を補正する、と二審裁判所は認定している。これにより、請求項3の付加技術的特徴は専利権の有効を維持するために請求項を制限的に補正し、追加された技術的特徴であると認定することができ、禁反言により、「銀膜」以外のその他の導電材料をタイバーとする技術方案は専利権者が放棄した技術方案とみなされる。
従属請求項が従属している請求項は無効されたことによって、該従属請求項が確定する保護範囲は制限を受けると簡単に認定するべきではない、と最高人民裁判所は認定している。請求項3の中の「銀膜」は請求項1~2に言及されておらず、かつげ、原告は専利登録及び無効宣告手続中に特許の請求の範囲と明細書を補正せず、意見陳述に「銀膜」以外のその他の導電材料をタイバーとする技術方案も放棄していない。よって、請求項1~2が無効になったことに基づいて、請求項3の付加技術的特徴である「銀膜」は均等論を適用できないと認定するべきではない。本案件は禁反言を適用せず、均等侵害を構成する。
コメント:
通常、従属請求項の付加技術的特徴は該請求項がその前にあった特徴をさらに限定する技術的特徴と新たに増加した技術的特徴という2種類を含み、従属請求項は独立請求項の方案の基礎上に新しい技術的特徴を増加し(本案件にとって、請求項3の付加技術的特徴は請求項1、2に概括されていない)、かつ、専利登録又は無効宣告手続中に、専利権者は該技術的特徴を狙って請求項の保護範囲が縮小になる補正や意見陳述をしていない場合、禁反言の適用を招くことはない。
3.案例5〔6〕
案件にかかわる専利の請求項1はフカヒレ式アンテナに関するものである。
そのうち、禁反言と関係する請求項1の中の技術的特徴はa、b、cである。
特徴a:アンテナ信号出力端はアンテナ接続部品を介してアンテナアンプ信号入力端と接続され、又は同軸ケーブルとマッチングに接続される。
特徴b:前記無線受信アンテナは射出成形の埋め込み又は固定的なカードローディングを通じてアンテナハウジングの内側上部に取り付けられている。
特徴c:前記無線受信アンテナはAM/FM共用アンテナである。
実質審査段階において、専利権者は、請求項1の信号出力接続方式(アンテナ接続部品)(特徴a)が引用文献1と異なること、アンテナハウジングの内側上部での取り付け方式(射出成形の埋め込み又は固定的なカードローディング)(特徴b)が非公知であることを主張している。審査官は、接続部品を通じてインピーダンスマッチングをすること(特徴a)が当分野の慣用技術手段であり、「射出成形の埋め込み」及び「固定的なカードローディング」(特徴b)も当分野の常用ロック方式であり、当分野の公知常識に属する、と認定している。これにより、特徴aと特徴bを基に進歩性を有することになるという専利出願人の意見陳述を明確に否定した。最後に、出願人は特徴cを請求項1に補足して、さらに保護範囲を縮小し、案件にかかわる専利が登録になった。
無効宣告手続において、専利権者は案件にかかわる専利の請求項1が引用文献1と比べて三つの区別特徴a、b、cを有し、案件にかかわる専利の請求項1の中の特徴aが慣用技術手段ではなく、特徴bが開示されていないと依然として主張している。専利権者の上記限定的な陳述は案件にかかわる専利の技術方案が特徴aと特徴bを含まなければならないと意図的に強調し、これも特徴aと特徴bを含まないが特徴aと特徴bと均等する特徴を含む技術方案を専利権者が放棄したことを意味している。これに対して、専利復審委員会は特徴aと特徴bにより、案件にかかわる専利が進歩性を有することになるか否かに対して、具体的に評価しておらず、特徴cにより、案件にかかわる専利が進歩性を有することになったと認定し、この基礎上に専利権が有効であると維持している。
本案件の権利侵害訴訟において、被疑侵害者は、被疑侵害製品がアンテナ接続部品(特徴a)を採用することではなく、射出成形の埋め込み又は固定的なカードローディング(特徴b)を採用することではなく、使用された技術は権利者が放棄した技術方案である、と考えている。
専利権者は専利無効手続において請求項に対して制限的な意見陳述をし、復審委員会は該意見陳述を明確に否定していないので、疑侵害製品の「アンテナリード」が案件にかかわる専利の「接続部品」(特徴a)と均等できない、被疑侵害製品の「のり接合」が案件にかかわる専利の「射出成形の埋め込み又は固定的なカードローディング」(特徴b)と均等にできない、及び被疑侵害製品が専利の請求項の保護範囲に入っていないという被告による禁反言を依拠とする主張は成立する、と二審裁判所は認定している。
専利登録及び権利確認は2つの手続であるが、両者は連続性を有する。権利者が行った陳述が「明確に否定された」か否かについて、専利登録と権利確認段階の技術的特徴への審査を客観、全面的に判断するべきであり、権利者が技術方案に対して行った限定的な陳述が最終的に裁判所に認めれたか否か、これにより専利出願が登録になった又は専利権が維持されていることを招くか否かを重点的に考察するべきである、と最高人民裁判所は再審で認定している。本案件において、国家知識産権局専利審査部門は専利権者による特徴aと特徴bに関する意見陳述を認めず、明確な否定意見を持っている。案件にかかわる専利が登録になったのは、特徴aと特徴bに対する限定的な陳述に基づくのではない。専利復審委員会は実質審査段階の否定意見を覆すことがない。よって、専利権者が行った限定的な陳述は実質審査中に明確に否定され、無効審査手続中に当該認定を覆して反対の結論を得ていないので、存在の専利権者による限定的な陳述がすでに明確に否定された事実を認定するべきである。このため、専利権者による特徴aと特徴bに対する限定的な陳述は技術方案を放棄したという法律効果を発生せず、本案件の権利侵害判定は禁反言を適用するべきではなく、本案件を再審することを二審裁判所に指令した。
コメント:
技術方案の放棄は意思表示による放棄と法律効果を有する放棄に分けることができ、通常、後者だけが禁反言の適用を招く。すなわち、権利者は専利登録・権利確認手続における権利有効性の不備の指摘に応対するために行った放棄であり、かつ該放棄が認められたので、禁反言の適用になる。専利行政訴訟は審査官の補正や陳述に対する認定を覆すことができるので、「明確に否定された」とは、専利審査と行政訴訟という2つの段階を含む。
本案件の場合、専利権者の同様の限定的な陳述について、登録段階において、審査官は特徴aと特徴bに対して明確に否定し、事実は特徴cに基づいて登録になった。権利確認段階において、専利復審委員会は特徴aと特徴bに対して明確な評価をしておらず、実際にも特徴cに基づいて専利権が維持された。登録と権利確認の段階において、特徴aと特徴bは実質的な進歩性の役割を果たしておらず、専利権者もこれに基づいていかなる利益を獲得しておらず、特徴aと特徴bに対する限定的な陳述は義医術方案の放棄を構成せず、禁反言を適用しない。「明確に否定された」の認定基準は文言の表面から機械的に理解するべきではなく、実質的な作用を生じることから出発し、客観、全面的に登録段階の審査通知書と権利確認段階の無効決定書の内容を理解し、審査官や専利復審委員会が明確な否定態度を持っているか否かを正確に確定するべきである。禁反言の目的は、専利権者の「両方で得する」ことで、社会公衆の利益を損害することを避けることにあるが、「両方で損する」ことにもならず、専権利者の合法的な利益を不当に損害するわけではない。
三、登録・権利確認手続における応対
権利侵害手続において、禁反言の適用根拠は専利出願人、専利権者が専利登録又は無効宣告手続中に請求項、明細書に対して行った補正や意見陳述であり、これらの補正や意見陳述は専利審査書類に記載されている。専利権侵害司法解釈二の第6条第2項の規定により、専利審査書類は専利審査、復審、無効手続において専利出願人又は専利権者が提出した書面材料、国務院専利行政部門及び専利復審委員会が作成した審査意見通知書、面会記録、口頭審理記録、発効済みの専利復審請求審査決定書及び専利権無効宣告請求審査決定書などを含む。請求項を解釈する際、専利審査書類は「内部証拠」として公知常識及び当業者の通常理解より優先であるが、禁反言は専利権者の「自己が境界線を作る」ことを強調し、最優先に適用するという地位にあるべきであり、技術方案放棄の情況が存在したら、専利権の保護範囲内に再び取り入れるべきではない。よって、専利登録又は無効宣告手続における請求項、明細書に対する補正や意見陳述を高度に重視しなければならず、意見陳述の表示方式もさらに注意しなければならず、これによって、禁反言の適用からもたらされた不利な結果を減少又は回避する。
本文では、登録段階と権利確認段階及関連のその他の専利の影響を狙って応対措置を提出する。
1.登録段階
まず、意見陳述にとって、審査官から指摘された不備を十分に克服できればよく、余計な陳述が必要ではなく、その他の未関与の技術的特徴、技術方案又は請求項に対して陳述を行わない。特に、新規性、進歩性などの審査意見を狙って応答する際、審査官は一部分の請求項の新規性と進歩性を認め、出願人もこの部分の請求項を独立請求項に限定することを望む場合、実質的な陳述を止めて、形式上の陳述だけをすればいい。
さらに、禁反言は専利権侵害訴訟における一つの重要な原則であり、専利審査過程において、出願人が新しい意見陳述を提出することでその前の錯誤の意見陳述を更正し、このような情況は禁反言が規範するケースに属さない。専利登録になった前に、出願人は前に提出した意見陳述の表現に誤りがあると発見した際、関連タイミングと期限規定を満たす前提で、出願人が新しい意見陳述を提出することでその前の錯誤の意見陳述を更正することを許可するべきである。〔7〕
このため、前回の審査意見通知書において、禁反言の結果を招く可能性のある意見陳述を行った場合、自発的に補充意見陳述を提出することで是正すること、又は次回の審査意見通知書を応答する際に意見陳述を通じて是正をすることを試してもいい。
2.権利確認段階
無効手続、特に専利権侵害訴訟がかかわる無効手続において、多くの情況では、無効請求人はかかわる専利のすべての請求項を無効にしようと思うだけではなく、専利権者が案件にかかわる専利の請求項の中の技術的特徴に対して無効請求項に有利な解釈限定を行うことを導き、これにより、専利の保護範囲が縮小になり、その後の専利訴訟活動に対して不侵害の抗弁を準備する。
このため、無効手続において、専利権者は最大の保護範囲を取ることで自身の合法的な権益を保護することを考慮するだけではなく、専利権が無効されることを避けるために請求項に対して必要ではない限定的な解釈をしないことを高度に重視しなければならず、これにより、権利侵害訴訟中に禁反言を適用し、その後の専利権者の権利行使活動に不利な影響を与えることを避ける。
3.その他の専利の影響
専利権侵害司法解釈二第6条第2款の規定により、人民裁判所は案件にかかわる専利と分割出願関係があるその他の専利及びその専利審査書類、発効済みの専利登録・権利確認裁判文書を利用して案件にかかわる専利の請求項を解釈することができる。すなわち、これらの特別の専利審査書類により、案件にかかわる専利の侵害訴訟において、禁反言が適用になる可能性もある。
このため、案件にかかわる専利の補正と意見陳述を重視しなければならないほか、分割出願関係が存在しているその他の専利〔8〕、同一の優先権を享有するその他の専利にあった補正と意見陳述も考慮しなければならず、さらに同一の出願人の一シリーズの類似な専利にあった補正と意見陳述も考慮する必要があるかもしれない。
四、まとめ
本文は禁反言適用の関連法律根拠を紹介し、さらに最高人民裁判所の四個の典型的な案例を分析し、当該四個の案例を通じて権利侵害手続における禁反言の適用を解釈する。最後に、登録・権利確認手続における応対措置を検討し、実際の代理業務に参考価値を提供できることを望む。
注:
〔1〕北京市高級人民裁判所による《専利権侵害判定指南(2017)》、第61条第2款
〔2〕中国専利法詳解、尹新天、知識産権出版社、2011年3月、第620、625頁
〔3〕最高人民裁判所民事裁定書(2009)民申字第239号、最高人民裁判所民事判決書(2010)民提字第158号
〔4〕最高人民裁判所民事判決書(2009)民提字第20号
〔5〕最高人民裁判所民事判決書(2011)民提字第306号
〔6〕最高人民裁判所民事裁定書(2017)最高法民申1826号
〔7〕専利代理人必修:出願人の応答意見が前後一致していない場合、審査官はどう考える?、《中国知識産権報》、黄道許、2016年9月12日
〔8〕最高人民裁判所民事裁定書(2011)民申字第1309号
〔9〕最高人民裁判所民事裁定書(2017)最高法民申1461号
(筆者 弁護士 王未東)
銀 龍 物 語
Epi.39 先輩
化学部 弁理士 張 黙
今年も、3月がやってきました。窓から外に目を向けると、新緑が芽吹き花が咲きはじめて春の足音が聞こえてきます。そして春は、なんとなくうれしい気持ちにしてくれる風も吹かせてくれるようです。
そんな風に少しの間、ポーっとした後、ふと現実にもどり、銀龍物語の原稿を頼まれていることを思い出しました。そういえば、わたしのDragon IPとの生活はもう6年になっており、その間には、上司、同僚とともに喜怒哀楽が盛りだくさんの出来事がたくさんありました。
〔綺麗になる〕
2016年末の所員総会についてです。Dragon IPからは所員に対してきちんと正装して出席することが奨励されていましたが、毎日書類に囲まれながら仕事をしているわたしたちにとってはそれは大きな「挑戦」と言えるものでした。
「綺麗なドレスなんて持っていないし、どうしよう。。。」と考えていたとき、上司の金鮮英先生が化学部の女性の同僚みんなにチーパオを準備してくれていました。金鮮英先生から呼ばれて会議室に行くと、綺麗にたたまれたたくさんのチーパオが並んでいました。みんな興奮を抑えながらそれらを眺めていました。そして、わたしは深い藍色のチーパオを選びました。
ヘアメイクをして、ハイヒールを履き、人生で初めてチーパオを着て、所員総会に臨みました。まぶしいスポットライトを浴びながらレッドカーペットをゆっくり歩いているとき、扉がひとつ開かれたような感覚がありました。
金鮮英先生が自分の新たな一面を発掘してくれたのであり、その所員総会の後、自分でチーパオを買いにいきました。また、タンスの中の綺麗なスカートも少しずつ増えてきています。「綺麗になる」が少しずつ実現できているかなぁ。
〔強くなる〕
欧米の企業を主要クライアントとする特許事務所に勤めた後、Dragon IPに入ったばかりの2013年、日本クライアントの要望ややり方を深くは理解できておらず、また、やることなすことが落ち着いていなかったこともあり、クライアントからの強いお叱りのレターを受け取りました。
気持ちの面において落ち込むとともに、わたしの自信も大きな打撃を受けてしまいましたが、その際、わたしを支えてくれたのは金鮮英先生でした。その頃も金鮮英先生は大変お忙しかったのですが、全力を傾けて特許代理業務の指導をしてくれました。
その指導では、オフィスアクション対応における引用文献の分析方法、審査官の心証をどのようにしたら変化させることがでるか、クライアントとの意思疎通をどのように行うべきかなど、いずれも非常に細かく丁寧に指導をしてくれました。
そのときから、わたしは2つの原則を理解しました。ひとつは、どのような細かな事柄であってもきちんと対応することです。もうひとつは、常にクライアントのことを考え、クライアントの負担をできる限り減らし、安心していただくということです。
その後、所内にて独立して案件を担当する資格をDragon IPからいただいた後、クライアントから「満足」のフィードバックをいただくことが少しずつですが増えていき、その2つの原則がわたしのこころに深く根を伸ばしていき、わたしの大事な財産になりました。
Dragon IPでの6年の間、わたしをサポートしてくれた人が多数おりますが、金鮮英先生はそのうちの一名です。先輩の歩みを追って、わたしも、綺麗に、強く、なれると信じています。
(銀龍物語Epi.39 おしまい)
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